SSH重点枠マレーシア国際共同課題研究
SSH 科学技術人材育成重点枠 全国 225 のSSH基礎枠指定校の中で、海外連携や広域連携など、特に先進的な取組を行う学校に国 が追加的な支援を行う制度です。令和6年度は全国で本校を含む 13 校が指定を受けています。 本校は「海外大学との高大接続を視野に入れた、国際共同課題研究の開発と普及」をテーマに研究開 発を進めています。マレーシアの国立大学 UPM: Universiti Putra Malaysia(マレーシア プトラ大学) の学生との 10 ヶ月間の定常的な国際共同課題研究を中心に、研究3年目となる今年度は、他校の高校 生も招待し、成果の普及を図っています。 また、参加生徒たちが国際共同課題研究の成果を活用して同大学に入学するための特別入試制度につ いて協議を重ね、令和7年1月に特別入試制度「UPM Challenge Programme」の調印を正式に行いま した。 |
令和7年1月16日 UPM Challenge Programmeに正式調印
UPM Challenge Programmeは、高校在学中にプトラ大学の学生との国際共同課題研究プログラムに参加した生徒を対象とした特別入試プログラムです。現在出願可能な学部は、国際共同課題研究の中心となっているFaculty of Biotechnology and Biomolecular Sciences(バイオテクノロジー・分子生物科学部)です。
令和7年3月卒業生からが対象で、これまでに本プログラムでの国際共同課題研究に1年以上参加し、以下の条件を満たすことが応募の条件となります。その後、面接試験の代替として国際共同課題研究の成果発表を行い、合格すれば令和7年10月にプトラ大学に入学することが可能となります。
Admission Requirement プトラ大学チャレンジプログラム応募要件
(1) Participated in UPM-YSFHS Joint Research Programme for at least one year プトラ大学との国際共同課題研究プログラムに最低1年間参加
(2) Obtained a CGPA (Cumulative Grade Average Point) of 4.0/5.0 高校3年間の全科目の評定平均が5段階の 4.0 以上
(3) Obtained a minimum grade 4.0/5.0 in the following subjects: Biology, Chemistry, Mathematics 履修した「生物」「化学」「数学」に関する科目の成績が全て5段階の4以上
(4) Obtained either of the English Language Proficiency qualifications as below: 以下のいずれかの英語能力資格の取得 IELTS Band 5.5+, TOEFL-IBT Score 60+
本校が目指す国際共同課題研究とは
単に海外に行って、課題研究の内容を英語で発表するだけの、従来型の研究発表ではなく、英語を共通語とし、オンラインと現地での研修(7月と1月の2回実施)を併用した、約10カ月にわたる定常的な国際共同課題研究です。将来言語や文化の違いを越え、グローバルな舞台で共同研究ができる人材の育成を図ることが目的です。
各チームの研究テーマ
高校生と大学生のチームによる国際共同課題研究ですが、大学生が高校生に指導する関係ではなく、テーマについて両校で実験や観察を行い、互いのデータを比較しながら考察する「国際共同課題研究」になるよう留意しています。
<令和6年度 各チーム研究テーマ>
A. Producing Bacterial Cellulose from Fruit Waste
「果物廃棄物によるバクテリアセルロースの生成
B. Optimal Glycerin Soap Production Utilizing Waste Glycerin
「廃グリセリンを活用した最適なグリセリンソープの生成」
C. Producing Biocellulose from Rice Water
「米のとぎ汁を利用したバイオセルロースの生成」
D. Investigating the Effects of Endophytes on Chilli Growth
「唐辛子の成長に対するエンドファイトの影響の調査」
E. Degradation of Different Oils by Chlorella
「クロレラによる様々な油の分解」
F. Assessing the Biodegradation of PLA Films: Experimental Analysis of Microbial Effects and pH
「PLAフィルムの生分解の評価:微生物の影響とpHの実験分析」
G. Harnessing Nature’s Defenses: Investigating Natural Ingredients with Antibacterial Properties
「自然の防御を利用:抗菌作用を持つ天然成分の研究」
4~5月「校内選考の方法(英語が苦手な生徒にも配慮)」
英語試験(リスニング)を全員に課しますが、各グループ内で最も高い点数をとった生徒のスコアのみを選考資料の対象としています。例えばバイオテクノロジーの分野に高い関心を持っていれば、英語が苦手でも、英語が得意な生徒とチームを組むことで互いの強みを生かせます。互いの専門分野や特技を生かし合う実際の共同課題研究に近い形になるよう工夫しています。
<選考項目>
「志望理由」「希望研究テーマ」「英語試験(リスニング)」「学校生活の様子」等から総合的に選考
6月「プトラ大学生とのマッチング」
校内選考後、相互の教員間で話し合い、プトラ大学で本校との共同課題研究を希望している学生の中で、研究テーマが近い学生とマッチングを行います。
<連携可能なプトラ大学の学部・学科>
1. Faculty of Biotechnology and Biomolecular Sciences バイオテクノロジー・生物分子科学部
2. Faculty of Food Science and Technology フードサイエンス&テクノロジー学部
3. Faculty of Engineering 工学部
7月「マレーシア研修(1回目)」
令和6年7月のマレーシア研修概要
月日 |
訪問先 |
研修内容 |
7/23(火) |
成田空港発 クアラルンプール着 |
マレーシアへ(飛行時間約7時間) ホテルチェックイン |
7/24(水) |
プトラ大学 |
Dr. Norhayati Ramliによる講義(午前)と実習(午後) Harnessing Microbial Potential in Pollutant Biodegradation「汚染物質の生分解における微生物の活用」 |
7/25(木) |
MPOB プトラ大学 |
午前:MPOBマレーシアパームオイル庁見学 |
午前:UPM内オイルパームプランテーション農園見学 |
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午後:研究グループディスカッション① |
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7/26(金) |
プトラ大学
クアラルンプール発 |
午前:研究グループディスカッション② 午後:UPMキャンパス見学 午後:研究グループディスカッション③・成果発表 日本へ(飛行時間約7時間) |
7/27(土) |
成田空港着 |
横浜駅で解散 |
1月「マレーシア研修(2回目)」
<令和7年1月のマレーシア研修概要>
月日 |
訪問先 |
研修内容 |
1/13(月) |
成田空港発 クアラルンプール着 |
マレーシアへ(飛行時間約7時間) ホテルチェックイン |
1/14(火) |
プトラ大学 |
午前:研究グループディスカッション① |
午後:Dr. Muhaimin Roslanによる講義と実習 Extracting Palm Oil from Oil Palm Fresh Fruit Bunch (FFB) 「アブラヤシの新鮮な果房からのパーム油抽出実習」 |
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1/15(水) |
プトラ大学 |
Dr. Normi Yahayaによる講義(午前)と実習(午後) Microbial chitin-degraders for upcycling of seafood wastes 「魚介廃棄物の再活用のための微生物キチン分解剤」 |
1/16(木) |
プトラ大学
クアラルンプール発 |
午前:研究グループディスカッション② |
午後:研究グループディスカッション③・成果発表 日本へ(飛行時間約7時間) |
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1/17(金) |
成田空港着 |
横浜駅で解散 |
3月「YSF-FIRSTでの発表」
YSF-FIRST(Yokohama Science Frontier Forum for International Research in Science and Technology)は本校が研究成果発表の場として毎年実施している国際科学フォーラムです。国内外の研究発表を通して研究の成果を共有し、地域におけるサイエンス教育の中核となる科学フォーラムの場を形成することを目的としています。
国際共同課題研究の成果普及の場とするため、SSH重点枠に指定された令和4年度より使用言語を英語とし、他校にも参加を広く呼びかけています。また、普段から連携を行っている横浜市国際学生会館の留学生や、サンモールインターナショナルスクール(横浜市中区)の生徒等、英語話者の参加者約40名を招待し、理数分野の研究成果を発表する国際フォーラムとして設定しています。国際共同課題研究のチームは10ヶ月の研究のまとめとして、このYSF-FIRSTで成果発表を行います。
国際共同課題研究に成果普及に向けて
重点枠指定1年目の令和4年度は、プトラ大学と国際共同課題研究の枠組みやスケジュールについて、約半年をかけて協議をしたため、共同課題研究自体は3カ月程度でした。2年目の令和5年度は、当初の計画通り、10ヶ月間に渡る定常的な国際共同課題研究を実施し、大きな成果を得ることができました。令和6年度は、これらの成果を全国に普及させるため、他県で先進的な取組を行っているSSH指定校の中から、茨城県立並木中等教育学校と池田学園池田高校(鹿児島県)を招待し、本校の生徒と同じスケジュールで研究を進めています。