一本の橋(令和8年9月号)
一本の橋
校 長 田中 秋人
夏休みが終わり、学校に子どもたちの声が戻ってきました。静かだった校舎に元気なあいさつや笑顔があふれる様子を見ると、「いよいよ新しい学びの日々が始まるな」と感じます。今年の夏も厳しい暑さが続きましたが、朝夕の風や空の高さに、少しずつ秋の気配を感じるようになりました。
夏休みには、それぞれのご家庭に応じた夏を過ごされたことと思います。私も少し時間ができたので、横浜を離れ、自然豊かな森の中を歩く機会をつくりました。普段の街中とは違い、森の中を歩いていると、鳥の声を聞いたり、木々を抜ける心地よい風を感じたりすることで、時間の流れをゆっくりと感じることができました。森の中を歩いていると小さな川を見つけ、しばらく川の流れを眺めていました。心地よい川の音を聞きながら川の様子を見ていると、そばの橋を渡る人たちが目に留まりました。その橋は決して大きな橋ではありませんでしたが、ゆっくり渡る人、立ち止まって景色を眺める人、先を急いで渡る人など、多くの人が利用していました。同じ橋であっても、渡る人によって歩く速さや橋の使い方はさまざまでした。当然のことですが、橋は急ぐ人にも、ゆっくり進む人にも変わらずそこにあり、それぞれを向こう岸へとつないでいました。
今年の本校のキーワードは「つなげる」です。私はこの橋の姿に、「つなげる」という言葉の意味が重なるように感じました。人と人をつなげる。思いと思いをつなげる。学びを次の学びへとつなげる。そして、過去の自分と今の自分をつなげ、今の自分と未来の自分をつなげていく。学校は、さまざまな「つながり」が生まれる場所なのだと思います。夏休み明けのこの時期、子どもたちはそれぞれ色々な気持ちを抱えて登校してきます。友達に会えることを楽しみにしていた子、夏休みの出来事を誰かに話したくて待ちきれなかった子もいるでしょう。その一方で、新しいスタートに少し緊張したり、生活のリズムを整えたりしながら学校生活を始める子もいるかもしれません。人それぞれ感じ方が違うように、学校生活への向き合い方もまた一人ひとり異なります。橋を渡る人の歩幅が違うように、子どもたちの歩幅も違います。元気いっぱいに走り出す子もいれば、周りの様子を見ながら一歩ずつ進む子もいます。ときには立ち止まって深呼吸をしたり、景色を眺めたりしてから歩き出すこともあります。しかし、どの歩き方にも価値があり、どれが正しいというものではありません。大切なのは、自分なりの歩幅で前に進もうとすることなのだと思います。だからこそ学校は、子どもたち同士をつなぐだけでなく、さまざまな気持ちをつなぐ場所でありたいと考えています。
9月からは、運動会やマイコンサートなど、多くの行事や学習活動が予定されています。さまざまな経験を通して、自分らしく成長していけるよう教育活動を進めていきます。また、行事だけでなく、朝のあいさつ、休み時間の何気ない会話、友達と一緒に笑う時間、誰かが自分の話を聞いてくれる安心感など、日々の小さな関わりの積み重ねも大切にしていきます。子どもたち一人ひとりが安心して自分の歩幅で歩み続けることのできる学校を目指し、今月も教育活動を進めてまいります。保護者の皆様、地域の皆様の温かいご支援とご協力を、よろしくお願いいたします。
