令和7年度 9月号

過去は未来を解く鍵

 校長 今野 敏晴

 7月30日、カムチャッカ半島沖で、マグニチュード8.8の地震が起き、日本各地に津波警報がだされました。揺れを感じない海外の地震でも津波の恐れがあることを実感しました。
学校だよりの9月号は、9月1日が、「防災の日」と定められるため、防災や安全に関することを毎年紹介するようにしています。カムチャッカ半島沖地震の際に、あるコメンテーターの方が、地球科学(地学)の基礎的な知識をもっていることが命を守ることにつながるという話をしていました。高校時代、地学を少しばかりかじった身としては心もとないと思い、この夏、京都大学名誉教授、
鎌田浩毅先生の「地震と火山の国に暮らすおなたに贈る大人のための地学の教室」を読みました。本には次のことが書かれていました。
「2011年に東日本大震災を経験した日本は今、地震と噴火が頻発する可能性のある『大地変動の時代』です。マグニチュード9という千年ぶりの巨大地震に、日本列島が揺らされた結果、地下にエネルギーが蓄積されている地盤や活火山にも影響が及んでいるためです。今後の数十年は、地震と噴火は止むことがないというのが、私たち専門家の見解なのです。
地学では『過去は未来を解く鍵』と言われています。過去に発生した現象を詳しく解析することによって、確度の高い将来予測を行うのです。例えば、過去の震災について書かれた古文書や地質堆積物として地層中に残された巨大津波などの痕跡から、今後起こりうる災害の規模を推定します。大きな地震は、百年に一度、もっと大きな地震は千年に一度起こります。大まかな地震の予測はできていて、北海道から沖縄まで、M9クラスの地震が想定されています。日本列島の中で、どこだから安心できるというわけではなく、リスクは、災害の規模と頻度、人口や経済活動なども含めて考える必要があります。その中で優先順位をつければ、最大のリスクは、南海トラフ巨大地震で、次は首都圏直下地震と富士山噴火です。
 私たちに必要なのは、『正しい知識』を身に付けておくこと、SNSでは、不確実な情報までが大々的に拡散されてしまいますが、だからこそ正しい情報見抜く目をもっていなければならないのです。」
学校現場における防災を含む学校安全については、阪神・淡路大震災、東日本大震災を契機として、安全に関する指導の充実が図られてきました。一方、学校における危機管理は、地震や津波、台風などの自然災害、火災、交通事故、教育活動中の事故、不審者、熱中症、個人情報管理、いじめ等に関する問題など多岐に渡り、指導する時間の確保や発達段階に応じた体系的な防災教育が課題となっています。
 本校では、避難訓練を避難することのみで終わらせるのではなく、災害についての特徴や身の守り方についての正しい知識を朝の会や訓練前後の学級活動の時間等を利用して指導するようにしています。また、職員研修にも力をいれ、外部講師を呼んだり、危険が予想される場合に教職員がとるべき具体的な行動や手順を見直したりしているところです。
 鎌田先生によれば、「巨大地震を人が完全に防ぐことは不可能です。よって、科学的にも予算的にも、災害をできる限り減らすこと、すなわち『減災』しかできないのです。効果的な減災を実現するためには、『地学の知識』が身を守ると私は考えます。また、『減災』を支えるキーフレーズは、『人や組織に頼らず自分ができることを今始める』です。だれかの指示を待って行動する受け身の姿勢ではなく、自らが動ける能動的な体勢を今のうちから準備することです。国は国、個人は個人という発想が大切です。」とのこと。この機会にご家庭での備えや防災意識について見直す機会にしていただければと思います。

 9月号の詳細は、すぐーるで配信しております。