静まり返った体育館に、皆さんの凛とした声が響き渡りました。

 64名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。卒業証書を受け取る皆さんの目は、中学校3年間、義務教育9年間の学びを得て、立派に成長した自信と誇りが感じられました。本校59期の卒業生として、寛政中学校の歴史に確かな栄光の足跡を残してくれました。

 日本中、いや世界中が混沌としていた2020年、皆さん一人ひとりは、本当によく頑張ったと思います。コロナ禍の中、家族の方々や、仲間と協力して必死に生きる姿、共存する姿、友を守ろうとする姿を見せてくれました。

 思えば、3年前の入学当初、心なしか頼りなさそうな顔をしていましたが、幾多の大きな波にも耐え、最終学年で劇的に変化しました。私の想像をはるかに超えるほどに強く、たくましく、優しく成長しました。君たちが連帯し、力を合わせれば、希望の光を放つことができました。

 寛政祭で見せた、学年劇「天使にラブダンスを3」の第1場面からエンディングまで、音響から照明、衣装、大道具、小道具の細部にわたり一人ひとりが魂を込め、学年がワンチームとなり、素晴らしい演技やダンスを見せてくれました。あの時、感動のあまり流した、心の涙を忘れてはいけない。それこそが君たちが目指していた「絆」です。仲間との絆、先生方との絆です。

 私の高校時代ラグビー部の部歌であった「勝利をわれらにWe shall overcome」を劇中歌で聞いたときは、感動のあまり鳥肌が立ちました。まさしく、「できることから始めれば 未来を変えることができる」のテーマを表現してくれました。

 体育祭では、4色の色リーダー、サブリーダー、実行委員を中心に、全力で取り組み、後輩たちに魂のソーラン節・エイサーを披露してくれました。3年生が全力を出し切った勇姿は、深く後輩たちの胸に刻み込まれました。

 また、委員会活動、縦割りでの活動など、最上級生として質の高い取組みと成果を後輩へ与えたことは、伝統として引き継がれていくものと確信しています。

 地域の方々や保護者の方々に温かく見守られている君たちは、「横浜の宝」「日本の宝」です。各地で起きた震災・災害を決して風化させることなく、被災地復興の一助を担ってほしいです。

 今は「巣立つ子」ですが、4月からはそれぞれの新天地で友を見つけ、恋をし、夢を追い続けていき、一歩ずつ階段を登り、「おとな」になっていくことでしょう。その途中で、誰かに背中を押してもらいたくなったら、熱き寛政中の先生方に話してほしいです。そっと手を差し伸べて、起こしてくださり、闇夜の道を照らし、背中を押してもらえると確信しています。緑学年の先生方も苦労や喜びを、共に過ごしてきた君たちと別れる辛さをかみしめていると思います。これから活躍する社会では、また新たな困難が発生するかもしれません。授業でSDGsを学んだように、この世界には2030年に解決に向かうべき17のゴールと、169のターゲットがあります。ぜひ、自分がチャレンジする目標として、自分が解決してやるのだとワクワクしてください。それが若さの特権です。社会に期待され、未来を担っていくことの証明です。君たちにはその力があります。

 4月からの高校生活で、ぜひ心にとめてもらいたい言葉を、私から最後のメッセージとして送ります。

 それは「言葉にならない気持ちに、寄り添いなさい。」というシンプルなセンテンスです。人は感極まると、言葉が出ないものです。喜びや驚き、悲しみが深ければ深いほど、人は言葉にならなくなるものです。スポーツ選手が、「うれしくて言葉になりません」とか、辛い思いをされている方にマイクを向けられても、絶句している様子を見ることがあるでしょう。それくらい言葉とは不完全なものなのです。友達で話をしない、言葉を発しない子がいたら、「言葉にならない気持ち」に、ただただ傍にいてあげて、そっと背中を支えてあげてください。

 言葉にならない気持ちに寄り添う優しさを持ってください。

 結びになりますが、本日はご来賓としておひとり、PTA会長様にご参列いただきました。心より感謝申し上げます。また、保護者の皆様には感染症対策として行いました、座席指定の措置に深いご理解をいただきまして、ありがとうございました。颯爽と巣立ちゆくお子様に感慨もひとしおのことと拝察し、お祝いを申し上げますとともに、ご入学以来、本校教育の推進に多大なるご理解、ご協力を頂いてまいりましたことに、そして、どんな時でも子どもたちを見守っていただいたことに、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

 最後に、巣立ちをする君たちへの、祝いの言葉をもって私の式辞といたします。

59期生の前途に栄光あれ

 

令和3年3月11日

横浜市立寛政中学校 

校長 森 勝義