令和8年 学校だより5月号
子どもたちを見守る「梅」
本校の校庭に、梅の絵が描かれた壁があります。多くの小学校の校庭には「投てき板」と言われる壁が設置されています。しかし、どうやらこの壁は「投てき板」ではないようです。投てき板は「板」ではなく、体育の学習などでボールを当てて遊ぶことを目的とした「壁」です。多くの学校の投てき板には、アーチェリーの的のような模様が描かれています。しかし、この壁に的は描かれていません。水墨画のようなタッチで、梅の花の絵が描かれています。この地域にゆかりのある梅であることから、おそらく「杉田梅」でしょう。制作したのは、画家の市瀬淑子さんだそうです。
昨年、見守りをしてくださっている杉田北部自治会の方に、この絵を描かれた人物について伺いました。この方は20年ほど前、本校が土曜日に開催していた「わくわく杉田ワールド」で、子どもたちに塗料で絵を描く楽しさを指導するメンバーの一人でした。校舎建て替えにあたり、当時の学校長から依頼があり、お知り合いだった画家の市瀬淑子さんを紹介されたとのことです。大切に保管されていた原画や、制作する様子の写真を見せていただきました。
市瀬さんは、原画を壁に投影して制作するのではなく、直接ペンキで描かれたそうです。小さいけれど力強く春の訪れを伝える梅を、丁寧かつダイナミックに描く様子が写真からわかります。壁の絵には今もなお、かすかに紅色のペンキが残っています。
出版物等によると、市瀬淑子さんは、1949年に東京で生まれました。アメリカの美術大学で油絵やデザインを学び、帰国後、武蔵野美術短期大学にて油絵を学びました。1986年ごろからは、日本、スウェーデン、フィンランドで、墨を使用した作品を発表してきたそうです。残念ながら、すでにご逝去されたと伺いました。 市瀬さんの活動を紹介するスウェーデンの新聞も見せていただきました。「彼女は子どもたちのために日本の絵を描いた」という題で、凛とした姿で、子どもたちに筆や墨で描いた文字を見せる様子が紹介されていました。その表情は、とても楽しそうでした。
先月、本校のこの学校だよりで校歌を紹介しました。二番には「開港都市(みなと)にそだつ自由の子」とあり、三番には「世界の人と手を握り理想をみがく平和の子」とあります。世界に羽ばたき、日本の文化のすばらしさを伝えてきた市瀬さん。ご縁があって、本校の壁に素晴らしい作品を描いてくださいました。市瀬さんの梅の絵は、元気よく遊ぶ子どもたちを、今も毎日見守っています。
あらためて、本校が地域の方に愛され、見守られ、応援されていることを強く感じています。

