学校だより
【6月号巻頭言】
“7イニング制議論”に思う
校長 角皆 裕文
「校長先生、こんなデータがあるんですけど、知ってましたか?」
先日、ある職員が私に見せてくれたのは、あるWEBページを出力したもの。そこには、横浜市の地点別「猛暑日の日数」が示されていました。
「えーと、昨年度7・8月において、もっとも多い32日の猛暑日を記録したのは・・都筑区長坂と・・緑区・・鴨居!!」
また暑い夏がやってきます。“横浜一アツい(!)小学校”鴨居小の子ども達が元気に学べるよう、安全に配慮して教育活動を行なってまいります。
さて、昨今の猛暑の中で実施方法の検討を迫られているもののひとつに、「夏の高校野球(甲子園)」があります。昨年12月、日本高校野球連盟(高野連)の設置した検討会議から、主に選手や観客、そして運営者の負担を減らす目的で「7イニング(回)制」についての提言がなされました。
高野連がこの提言のためにアンケートを実施したところ、一般向けでは7回制に賛成が反対を10%上回ったのに対し、加盟校を対象にしたものでは7割以上が反対という結果だったそうです。
反対意見としては「選手の出場機会が減る」「最後の2回に大切なものが詰まっている」が主なもののようですが、どちらにも共通するのが「教育的価値が削がれる」という主張です。
私が疑問を抱くのは、選手の安全を守るために議論するのに、「夏休みに甲子園でやることが前提」となっている点。そして、選手の安全と教育的価値がトレードオフの関係として議論される点です。
前者については「夏の甲子園のドラマ」に対して、選手だけではなく、ファンやメディアなどが計り知れない期待を集めていることが背景にあることは想像できます。また、「今まで大切にしてきたものをそのままにしてほしい」という関係者の思いがあることを考えれば、どうしても譲れない線だったのかもしれません。
後者については、「子どもの安全」と天秤にかけている「教育的価値」とはそもそも実測できない曖昧なものである、ということに注意しなくてはなりません。
規模の差こそあれ、こうしたことは私たちの教育活動の中でもしばしば起こります。明らかに安全面や人権擁護の観点で疑いが生じているのに、いざその活動を停止しようとすると「そこに教育的価値があるのに!」という声があがります。私たちはこの「教育的価値」という言葉の前に硬直してしまいがちです。「教育的価値」は時にこんな言葉にも姿を変えます。「貴重な体験」「そこでしか学べないもの」・・・。
自然環境や人権意識は時代に合わせて変わっていきます。本来ならばそれに合わせて柔軟に、時にはゼロから再構築するべきではないでしょうか。「こうでならなくてはならない」を一旦手放して、活動の中に十分な安全と人権を確保した上で、教育価値を高めていく。難しいことではないはずです。
余談ですが、7回制に対する反対意見の中には「選手は“ありえない”と言っている」というものもありました。子どもの思いを聞くのは大切ですが、たとえ子どもが楽しみにしていることであっても、道理に合わないものであれば、丁寧に説明するのが大人の務めだと思うのです。
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