学校だより
【6月号巻頭言】
学校にしか果たせない役割
校長 角皆 裕文
「そんなこと最初に言ってなかったじゃないか!」
昼休みも終わろうとしている校庭の隅から大きな声が聞こえてきました。何事かとそちらへ目を向けると、ある子どもが1人、顔を真っ赤にして4~5人の集団へ向かって抗議をしているようでした。目からは涙がこぼれ落ちているようです。内容はよく聞き取れませんが、立て続けに大きな声で抗議をし、その集団の中のひとりの子に詰め寄ります。相手もあまりの勢いに後ずさりする様子。私から離れた場所で5時間目の体育の準備をしていた職員が気づき、向かおうとしています。私はとっさに職員の視界に入るよう大きく手を振り、ジェスチャーでこう伝えました。
「ありがとう!ここは私が見守るから任せてください!」
なぜジェスチャーだったのか。きっと私は「子どもだけの世界」を確保したいと思ったのでしょう。
手でも出ようものなら飛んでいく構えはできていましたが、怒った彼は相手の腕をつかんだところでぐっとこらえているようでした。やがて5時間目の始まりも気になりだした集団は、彼から逃げるようにして昇降口に向かい、彼は1人残された格好に。
「○○さん!」
私に手招きされた彼はこちらへやってきて隣へ座ると、涙を流してルールへの不満を訴えていました。ひと通り話を聞くとだいぶ落ち着いてきた様子。
「少しここでゆっくりして行ったら?」ティッシュを差し出すと自分で涙を拭き、こう言いました。
「5時間目・・・△△だから大事なんだよな・・」その理由はなんとも子どもらしい、クラスメイトへの相手意識をもった素敵なものでした。教室へ向かう彼の背中を見ながら、ひとまず先の言い争いに分け入らなくてよかった、と思ったのでした。
この春、本校に新規採用された職員と「学校の役割」について深く語り合う機会がありました。本や動画、塾など多様な「学び方」があふれる現代において、「学校にしか果たせない役割」があるとしたら、それはなんだろうか。私達の結論は「集団の中で学び育つ場を提供すること」というものでした。1年生の保護者の皆さんには入学式でお話ししましたが、集団で居れば当然トラブルが起きます。トラブルを避けようとすれば、すべての摩擦や衝突に大人が介入すればよいし、ともすると「関わらないようにしなさい」と指導すればよいわけです。しかし、それで本当によいのでしょうか。
子ども達の間でトラブルが起きた時、私達を含め大人の態度が試されます。子ども達が自ら問題を解決する力をつけるために、どこまで介入すべきか。保護者の皆さんとも議論しながら、子どもの育ちを共に見守っていきたいです。
令和6年度 バックナンバー
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